警鐘を鳴らす

イン・ザ・プール (文春文庫)
奥田 英朗 / / 文藝春秋

炭酸飲料的本を求めて、引き続き読みやすそうな本へ。
おかしな精神科医と、そこへやってくるおかしな症状を抱えた患者たち。
だれもが、モノや、行動や、回りの評価に「依存」している。
そんな現代の社会を皮肉り、笑いとばしつつもちょっとぞっとさせるデフォルメぶりがこの人らしい。
真を突いているし、書いた当初と比べて(そんなに古くないと思うが)そのデフォルメがデフォルメじゃなくなっているような現実を考えると、視点が面白いと思う。

でもね、なぜか私はこういうタイプの、「現象をデフォルメして笑い飛ばしながら警鐘を鳴らす」的な本に、ちょっと抵抗を感じてしまうのだな。
お笑いなどはみんなそうだと思うし、その視点のするどさが笑いにつながるので、ボーダーラインはとても微妙なのだけれど、特に「警鐘を鳴らしています」というニュアンスが巧妙に隠されていたりすると、それまでの面白さがあざとく感じてしまうのだ。
その人があくまでその現象の「外側」にいる、という感じがするし。

この人の前に読んだ「サウスバウンド」も、そんな空気を感じ、やはり、作風はどうあれ、その人の思いは出てしまうのだなあと思う。
書く物はこわい。意図しない部分までにじみ出てしまうなあ。


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