六月の読書

どうも本の読めなかったここ数ヶ月。
それでもいくつか手に取った中からいくつか。

生命の木の下で (新潮文庫)

多田 富雄 / 新潮社

なんて美しいタイトルだろう、と思う。
免疫学者として、世界各国を旅したエッセイと、わずかに、ご自身の病気のこと。
再編集なので、話はあっちこっちとぱらぱらしているけど、一つ一つのエッセイは重みもあって、含蓄もあって、読み応え有り。
なんといっても、全く知らない世界を見られる。
特にタイの少数民族の麻薬汚染はショッキング。
世界は、私が思っている程甘くないけど、でも、偽善でも慈善でもなく、そこに向き合う人がいるのだというすごさを見せられた。

見えるものと観えないもの―横尾忠則対話録 (ちくま文庫)

横尾 忠則 / 筑摩書房

これもまた、タイトルに魅かれて。
対談自体は、もう今はやりのスピリチュアルを軽く超えて、原点のオカルト?狂気?を感じるが、
この人の創作の根っこが見えて面白い。
濃すぎて、ちょっとずつしか読めない本は、久々。
完璧に怖いもの見たさですな。

思いわずらうことなく愉しく生きよ (光文社文庫)

江國 香織 / 光文社

私のすきな江國さんの中で、もっとも恐怖を感じる一冊。
暴力の描写で、こんなに本質的に怖いと思うのは初めてかもなあ、と思う。
DVそのものが怖いのではなくて、人の弱さというのが怖い。
自分の中にある弱さに比例して、人を痛めつけかねないということは、
無自覚だし悪意がない。
悪意がないのは、一番やっかいで、危ない。
その悪意のない危さを自分が持っているということも、怖いし、
自分が誰かのそれを引き出しかねないということも、怖い。
いずれにしても、相変わらずの見事な心理描写でございました。


コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。