景色を変える音楽

一度お仕事を一緒にさせていただいてから、一ファンであるバイオリニスト金子飛鳥さんのライブへ。

ふくふくや、ダンサーの方の公演と立て続けに終わり、その合間に次の舞台のドタバタがあり、
体がもういうこときかなくなってました。
寝ても寝ても眠い。だるい。しんどい!

当日まで、行くかどうか迷ったのだけれど、飛鳥さんもう日本に住んでないからな、来日したときに観ないとな、まだ観た事ないピアノとのデュオだしな。
と、自分にいいきかせながら都内へ出る。

表参道、青山界隈は私の苦手な場所のひとつで、毎度毎度自分の中のコンパスがグルグルしちゃって、めちゃくちゃ迷う。いつでもどこでも迷う私だが、この地域は特にひどい。

それでも何とか時間ぎりぎりにたどり着いた。
あの町のスタイリッシュさに飲み込まれるようで、もうへとへと。

ライブは、何度か見ている中でも特に、静かでクラシカルなスタイルのライブ。

しかし、飛鳥さんのバイオリンはもはや、バイオリンではない。
いわゆる西洋の楽器っぽさが全然ない…どこか中米あたりの古代の国の、古い楽器のよう。
いやもちろん、クラシックの基礎をしっかりふまえた、美しいバイオリンらしい音色なんだけれども、つまり、「バイオリン」というスタイルがどこにもない、本来楽器がそうであったような、魂の声をきくような感じ。

毎度、彼女の曲や歌や演奏には、既存のスタイルを超えていく魅力を感じるのだが、
今回はもはや、脱バイオリン(笑)
うーむ。あんなにクラシカルなホールで、西洋楽器の王様ピアノとデュオなのに…

そして初めて聴いたピアニスト、フェビアン・レザ・パネさんもまた、特殊な人だった。
失礼を承知でいうと、「ぜんぜんすごくない!」
その、すごくなさぶりが実はすごいのだけれど、飛鳥さんがどんなに広い場所を縦横無尽に駆け巡ろうとも、彼の音は、とにかく静かに、「そこにあるだけ」なのだった。

反応してないわけじゃなく、冷めているわけでもなく、全てを感じて、そこにあるだけ。
ベーゼンドルファーとは思えないような、やわやわの音もまた、すごくないようで、すごい。

大仰なテクニックは全然見せずに、でも音への神経のきめ細やかなふたり。

がっつりのめり込む、とか大感動!とかなかったけど、心地よかったな、と思いながら歩くの帰り道、じわじわと音楽が効いてきた。

おしゃれすぎて不気味なだけのブランドのビルから、キラキラ光が見える程、
帰り道の風景が変わってしまう。

いい音楽って、そのときにがつんと来なくても、帰り道に泣けてきたり、景色を変えたりするんだよな。
自分を包む空気がきれいになって、混んだ電車さえも余裕綽々。

行けてよかった。
CD発売記念だったというのに、あまりにふわふわしていて肝心のCDを買い忘れましたが…


コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。