イラク報告会に参加して

正直、私にはどうしても遠い出来事だと思っていた事が、中東問題。
ニュースもとても断片的だし、ちょっと知ろうと首を突っ込むと、とにかく難しすぎる!複雑すぎる!
これは丁寧に知らなくてははいけない、中東を知る事はこれからの日本にとってもとても大切、
そう思いつつも、荷が重すぎる感じがしていた。

そんな中facebookで流れて来たイラク、クルド自治区報告会に行ってみた。
現地で長くエイドワーカーとして活動する高遠菜穂子さんと、劇作家篠原久美子さん、俳優の小林綾さんが現地を見た報告だ。

高遠さんの話は、イラクの様々な宗教、さらには宗派が絡み、近隣国の状況も複雑な中で、
前知識がなければどうして今その戦闘が行われているのか、理解するのが難しいものだったけれど、(私、前知識ゼロに等しく…とてもここで内容をまとめる事はできません…)
現地の人が抱いている感情や実態、生活がリアルに迫って来た。

アメリカの空爆を待ち望む程、現地の状況がひどかったこと、
民主化デモで何人も人が殺され、それでも毎週金曜日に丸腰でデモに参加するイラク国民の粘り強さ、
国外に難民として逃げ出せる人たちよりも、より厳しい状況の国内避難民。

苦しくなる程の話を、高遠さんはユーモアも交え、軽快で淡々とした口調で語る。

そして、篠原さんと小林さんも交えて避難所への支援や観光の話も。
日本もそうであるように、苦しむ人がその国の全てではなく、同時に繁栄している地域もあり、
人々は明るくて、親切で、暮らしとはこういうものだという当たり前の人間模様がある。

…長い報告会の最終盤、高遠さんは涙を流して、
「日本を戦争をしない国じゃなくて、戦争を止める国にしたい」と言った。
高遠さんの現地の友人も何人も何人も殺されるのを止められず、
仕事がないばかりにISに入ってしまう若者を止められず、
武力に武力で立ち向かう事で、何度も何度も同じ状況をくり返している。

ヒロシマ・ナガサキを経験し(この事は大きな意味を持つのだそう)憲法九条を持つ日本が、
どうして停戦を呼びかけるくらいの事ができないのだろう、
どうして武器輸出や軍への後方支援ではなく、現地に仕事を生み出すことができないのだろう
日本に求められているのはそういうことじゃないの?
そう、叫んでいるように聴こえた。

冷静で軽快だった高遠さんの最後の感情の発露は、不謹慎だけれど、とても「劇的」だった。
それは人の心を素直に動かす。
私はうがった見方かもしれないけど、それを引き出したのは、
きちんと言葉を伝える劇作家がそこにいて、俳優がただ、涙をうかべて「うん、うん」と高遠さんの話を身体全部で聴いていたことにも依るのではないかと思った。
イラク問題と演劇人…遠いように思えたそのつながりが、あのとき私の中で繋がった。

ただ最後に、冒頭の俳優による報告リーディングは、内容が「過去」であったり「虚構」であれば成立するのかもしれない。
あの篠原さんの書いた報告書は究極に「リアルタイムのリアル」であり、何の誇張も脚色もない。
それゆえに文章の迫力の方が勝るため、情感たっぷりのリーディングには、ちょっと違和感があった。
文は文として、力があるということもまた、感じた。

…それにしても、知るということは「縁」だ。
縁を繫いでしまったら、知るために学び続けるしかないのだと私は思う。


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