アートには名も立場も上下もなく

先日上野で、3つの展覧会をはしご。

ひとつは、見逃したくなかったモネ展。東京都美術館。
特別に印象派好きなわけではないので、あんなにたくさんのモネの絵をいっぺんに見たのは初めて。

印象派の代表作のような絵を、生で、しかもある程度距離を取ってみるすごさは印刷物には変えがたく、興奮したけれど、
若い頃の人物の風刺画も面白かったし、何より晩年、原色で、荒いタッチで、色味を変えてなんども同じ構図で庭のいくつかを描いているのがたまらなく熱く、ため息がでた。

演劇やライブで一流の物を見る10分の1くらいの値段で、あの生を体験できるのだから、
美術館てすごいや。

とはいえ、話題の展覧会、大混雑!
人をよけながら全貌を見るのは難しく、しかもにぎやかで、
通り過ぎるおばちゃまたちが、多分小さな声で(十分普通の声で)「やっぱり年とったらだめね〜全然何描いてるかわからないわ」とか
しゃべっているのがおもしろすぎて、集中できないよ!!

地方の静かな美術館で一人で絵に出会いたいな〜
などと無理な不満をもちつつ、パッと目に入ったポスターを見て、
すぐ近くの芸大美術館の藤田嗣治の修復画を観に。これは無料。

修復技術の説明はさっぱりハテナでしたが、彼の絵と共に書簡や写真が
彼の愛すべき変人っぷりを伝えていて、微笑ましくて仕方ない。
こんなに世の中とは別の美意識で生きていたであろう人が、戦争画を描く事になる切なさを思いました。

ここは、マニアックな人しか来ないのか、人は多いけど、しーんと静まり返って、心地よい。

そしてそのまま芸大敷地内の別の展示、アール・ブリュット展へ。
現代画家の展覧会かなと入って、見ていくうちにびっくり。
身体や心に障害を持つ人たちのアート。
もうね、作品から漂うウキウキ感とマニア感がすごい!!
すごい緻密で大胆。めっちゃ面白い!

なんか、晩年のモネの作品と並べても、違和感無く収まりそうだし、
変人オーラでまくりの藤田嗣治さんの写真がその作者にもし貼ってあったとしてもなんの違和感もない。
彼らは、同じ唯一無二のアートというだけで上下もなく、仲良く繋がっている。
アートは、名前も、立場も本当にまっっったく関係ないということを証明している。

ああ、いいもの見てよかったなあ。
巨匠だけではなく、今を生きるアートを最後に見れて、本当によかった。
その表現が、いつまでも自由にのびのびと保障されますよう。
それもまた、3つのアートを通して見て痛切に思う事でありました。