うるさい芝居にも品がある訳@ふくふくや

ふくふくや「カランのコロン」を観に行く。まだまだ上演中なので、ネタバレしないようには書きますが(無理かも)、前情報が気になる方はスルーで。

昭和のはじめの浅草、小さな食堂に集まる芸人とヤクザと踊り子たちの
奇妙なバランスで成り立つ陽気な暮らし。
そこに大阪からある人がやってきて…

レトロ感あふれるセットが美しい。
特別な仕掛けは何もないけれど、セットと照明で、映画の中に入ったような気持ちになる。

始まって、ほっとした。
声量感が抜群なのだ。
最近見た芝居のほとんどで、「声が大きすぎる」ということに、違和感を覚えていた私。
ふくふくや、最初の第一声から、途中エキサイトするところから、ささやき静まり返るところから、エンティングまで、私が今回始めに感動したのは、この「適切な声」

感情を振り切りながらも音が割れない。
素晴らしいシンガーや演奏家もみんなそうだから、演劇も音楽も、やっぱり一緒。
そして言葉のリズムや強弱やスピード、緩急、この劇団は言葉にとても繊細に向き合ってると、いつも思います。

ああそうか。下世話な内容ばかりでも、うるさい芝居をしても、なぜか品があるのは、
この言葉への繊細さや、所作の美しさからくるのかもな。

役者はふくふくや劇団員と、ベテランの客演たちと新人たち。
いいバランスで新人のカラーがでている。
もちろんそれは団員や客演に安定の力量があるから。

うーん、でもバランスがいいけど、ちょっと脚本の文字が透けて見えるなあ、よくも悪くも真面目すぎるなあ、と思っていたところに登場する山野海と44北川。
彼らが、綺麗に整ったバランスを崩して、一気に転がり始める芝居。
うまい俳優は全国たくさんいるけれど、空気を動かせる人って、少ない。
みんながそれをやったら困るわけだし(笑)

そこから先は、もう書く気がしない(笑)
怒涛の展開と、圧巻の芸と、彼らが芝居を超える瞬間。
号泣。

これが見たかったんだよ!
何も言いたくなくなる芝居。
ただ、お金を払ってエンターテイメントを楽しみたい。それを満たす芝居だった。

もちろん、もうちょっと芝居の立ち上がりが早ければなあとか、
説明のセリフが多すぎる気がするなあとか、
「そこ、いいセリフしゃべってる場合じゃないんじゃない?」とか、
いくつか気になるところはあったけど、
終演後に顔を見られたくないくらい涙が出る作品は、一年に一本あるかないかなので、
ああ~幸せ。と思って劇場を出ました。

10月9日まで。
ふくふくや