本当にこわいのはなんだろう「標的の島 風かたか」を観る

「標的の島 風かたか」という映画を見てきた。
風かたか、は沖縄の民謡の中にも歌われていて
「風除け、防波堤」という意味だそうだ。

沖縄の基地問題といえば、とりあえず思い浮かぶのは、
連日ニュースになっていた辺野古の新基地建設、
高江のオスプレイのヘリパッド建設。

だけれど、宮古島と石垣島にも、自衛隊の配備と、そのためのミサイル発射基地建設が計画されていて、映画は、その4地点それぞれの様子が、並列に進んでいく。

というか、4ヶ所も基地問題で揉めてるの、知らなかったよ!!
そして、それはそれぞれ単独の計画ではもちろんなくて、
米軍の対中国戦略として、島々に基地を置き、仮に中国からの攻撃を受けた際には
自衛隊は(米軍は、じゃないんです)その島々を戦場として戦う。

島々が、攻撃の標的となり、防波堤となる。

(さらには映画ではちょこっとしか触れてないけど与那国、奄美にも自衛隊配備して
とにかく島を網羅して防波堤を作るって話)
というショッキングな計画だった。

それぞれの地に生きる人たちの怒りと闘いの中で、ひときわ丁寧に描かれているのは、
島の芸能、地域の秘祭や、エイサーの風景。
それどころか、選挙に勝ったと言っては踊り、
ゲートの前の座り込みでも、伝統的な三線の日には三線をかき鳴らし、舞う。
それを機動隊が止めて排除をしていく。
その悲しさを、彼らはまた民謡で歌う。

とにかく、嬉しいにつけ悲しいにつけ、芸能がしみついている。
いつでも芸能が共にある姿が、抗議行動での戦争のような光景と対比されて、美しくて面白くて、すばらしかった。
ここは闘いの島、みたいに言われているけれど、芸能の島だ。

抗議行動の中で、機動隊にも真正面から向き合って訴え続ける地元の人たち。
全国各地から送り込まれた機動隊の、仮面をかぶったような若者が、おじいおばあを排除していく様子。
母親たちの声も聞かず、今流行りの国への「忖度」を進んでしちゃう地方議会。
国を変えることよりも、私たちこの地方議会をなんとかしなくちゃいけないんじゃない?と思うような思考停止状態っぷりに、これ、たぶん他人事じゃない、と思いました。
本気で、うちの市でも起こりそうなことが、映画の中で起こってました。

映画の後、怒りと悲しみでいっぱいになって外へ出てみれば、
新宿の街を行く人たちの顔がみんな、あの「機動隊の若者たち」の顔に見えた。
「自分で考える」ということをやめている顔。
そうしなければ自分のいる世界で生きていけないんだよ、という無表情。
それが一番怖かった。